研究課題
基盤研究(C)
マイクロ波車間距離センサは既に実用化され実際に高級車に搭載され始めているが、現実にはまだ二つの大きな課題が残されている。一つは精度の問題であり、もう一つはコストの問題である。その測定方式としては低コスト化の為にFM-CW方式やドップラー方式が専ら用いられるが、前方車両との距離が測定時間中に変動していると、それがそのまま誤差要因となり本質的に精度が上がられない欠点を持っている。FM-CW法では距離情報は信号の周波数スペクトルとして現れ、そのスペクトル解析が重要である。従来はこの部分にFFTが採用されてきた。その部分に非定常スペクトル解析の一つである時間・周波数分解能が高いウィグナー解析を採用して精度を上げるのが本研究の目的である。ウィグナー解析を用いることで精度改善が期待できるにも関わらず、それが現実的には全く検討されてこなかったのは、ウィグナー解析にはクロス項と呼ばれる偽のピークを発生させる大きな欠点があり、その為、分解能の高さにも関わらず、従来のFFTを使用する場合よりも精度が悪くなることが予想されたためである。我々は、その為に汎用に用いることが出来るクロス項の抑制法を開発した。これは、従来の事前情報が必要であったり肝心の分解能の悪化を引き起こすクロス項抑制法と異なり、事前情報なしに分解能を悪化させることなくクロス項を抑制する。この方式の採用により、車間距離センサにウィグナー解析が利用可能となる。最終年度である今年度は、昨年度までに開発した車間距離センサを対象としたFM-CW法のウィグナー解析を用いたシミュレーションプログラムと、モーター駆動の前方車両模擬装置を使った実験的研究により実際的な状況下でのFM-CW法におけるデータ解析にウイグナー解析を採用する有効性を検証した。その結果、前方車両との相対距離が変化しない場合や変化量が小さい場合は従来の手法であるFFTによる解析結果とウィグナー解析を用いた場合の精度の違いはあまり見られなかった。しかし、相対距離が大きく変化する場合は条件にもよるがウィグナー解析を採用した場合の結果が3〜10倍の精度改善がみられた。さらに、周波数掃引率や周波数可変範囲・サンプリング速度・データ長等のパラメータを変化させた場合の精度の違いを調べ、パラメータの最適化を行った。また、実際のシステムを想定し、リアルタイム処理を可能とするために、DSPを使ったデータ処理も実現させた。その結果、データ長1024点〜2048点程度までであれば、クロス項抑制処理を含むウイグナー解析の計算をリアルタイムに実行可能であることを実証した。以上の研究成果や応用例をいくつかの学会や論文誌に報告すると共に、報告書としてまとめた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (11件)
Proceedings of the 2007 international symposium on antennas and propagation Vol.1(to be published)
Proceedings of the 2007 international symposium on antennas and propagation Vol.1
Journal of Plasma Physics Vol.72,No.6
ページ: 1077-1080
高速信号処理応用技術学会論文誌 第9巻第1号
ページ: 28-35
IEEE Transactions on Aerospace & Electronic System Vol.AES42, No.1
ページ: 228-236
電気学会論文誌C Vol.126,No.12
ページ: 1460-1466
電子情報通信学会和文論文誌 Vol.J89・B
ページ: 1755-1764
Journal of Plasma Physics Vol.72, No.6
Signal processing Applications and Technology Vol.9,No.1
IEEJ Transactions on Electronics, Information and Systems Vol.126, No.12
IEICE Transactions on Communications Vol.J89-B