研究課題
基盤研究(C)
<目的>元々3次元のヘリカルCTデータであれば、処理も3次元化すれば腫瘤検出の精度が良くなると考えて、肺野内の血管の3次元形状の時間変化として腫瘤を検出するスクリーニングシステム構築に向けての基礎研究を行った。具体的には、血管の認識、対応付け、重ね合わせの手法の開発である。<肺野内血管の認識>血管は細長くしかも分岐を伴うため、2時期のヘリカルCTデータからそれぞれ肺野内血管の芯線を求めて、まず芯線同士を対応付け、それに基づいて血管同士の3次元重ね合わせを行い、差分をとることによって形状変化を検出することとした。本研究では、まず血管を断面素の連続体と考え、その分岐を連続する断面素間のホモトピーの変化として定義する逐次的領域成長法を確立した。この手法の適用を自動化するため、画像の中心部は心臓である事実に基づいて心臓からの血管が肺野内に貫入する場所を特定してそこを初期断面素とした。さらに、処理を安定化するため、肺野を取り囲む筋肉組織や肋骨などを取り除き肺野のみを抽出する処理も加えた。アルゴリズムの開発はヘリカルCTデータを用いて行ったが、これらのアルゴリズムは空間分解能のより高いマルチスライスCTデータに対してもそのまま適用できるのが本アルゴリズムの特徴である。<血管の対応付け>2時期のヘリカルCTデータから得られた芯線の分岐点を対応点と考えて、両芯線を対応づける手法も開発した。それぞれの芯線において、対応のとれた分岐点を中心として球面を考えそれらの半径を大きくしながら芯線の枝との交点を追跡していき、いずれかの球面で次の分岐点が現れた段階で球面上の交点の位置から芯線の枝の対応付けを行う(球面探索法)ことによってまず芯線同士の対応をとった。データの一部を切り取った小規模の血管を使って性能評価を行って性能を確認した。<血管の重ね合わせ>芯線の対応を基に、血管の3次元重ね合わせを行う。データが存在する直方体領域を、対応がとれた分岐点が頂点となるような三角錐領域に分割していくアルゴリズムを開発した。これを用いて、対応する三角錐ごとにアフィン変換を施すことにより、単に断面素を平行移動するよりも滑らかな形状変形が行われ、結果として腫瘤検出の精度向上が期待できる。1時期のすでに認識した肺野内血管を人工的に歪めたものを用いて数値実験を行ったところ、性能が十分であることを確認した。<まとめ>以上、全体を統合するまでには至らなかったが個々のサブシステムは十分な性能を持つことが確認できた。今後の誤題としては、システムの統合と多くのデータを処理することでさらなる性能の向上を図ることである。その際、CTの分解能が十分でないため、データ上で血管が接続しているように見える、いわゆるループの存在が問題になる。この点も含めて研究を継続していきたい。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
電子情報通信学会技術研究報告 105.579
ページ: 143-146
電子情報通信学会技術研究報告 105.580
ページ: 101-104
IEICE Technical Report vol.105, No.579
IEICE Technical Report vol.105, No.580