茸の成長の活性化と関係がある生体電位信号を指標とし、至適生育条件を工学的側面から検討し、栽培制御用の新しいタイプの光源装置を開発する。また、茸が誘発する自発性のバイオリズムを伴った生体電位信号をモニタし、バイオセンサとして活用することで、その信号により周辺の茸の光刺激環境を制御する栽培技術を開発する。以下に、本年度の成果の概要を記す。 (1)生体電位の精密自動計測システムの追加製作を実施(平間・宮本担当) これまでに試作した装置のノウハウを活かし、新たに空気組成や光刺激をプログラマブルに設定し、生体電位を自動計測できるシステムを構築した。これにより、光の強さ、明暗刺激間隔、波長(色)などの実験項目に対し、生体電位信号を指標とし至適成育栽培のより効果的な環境条件を確立した。 (2)SQUIDI装置を用いた子実体からの極微弱磁場信号計測(平間・宮本担当) SQUID装置により、光刺激時の茸子実体から誘発する自発性極微弱磁場信号(fTからpTオーダの磁気)の計測の試みを実施した。磁場信号の計測の再現性を複数回確認し、計測データの意味解読に焦点を絞り、これまで観測できた生体電位応答特性との関連性や、茸自身の生理活性状態や健康診断などのへの応用を検討した。 (3)MRI装置を用いた菌糸の発達の3D撮影に成功(平間担当) 地下系である培地内部の菌糸の発達に関して、植菌直後から子実体が胞子を落とすまでの期間について、MRI装置を用いて非破壊的に系統的に断層画像の3D化の撮影に成功した。地下系の菌糸の発達と茸の熟度との関係を明確化することで、栽培初期段階から茸の一生の形態を推定できる見通しがついた。 (4)試作型簡易Growth Chamberを用いた形態成形実験(平間担当) 種々の光刺激を与えた場合の成長の比較実験(形態形成実験)を実施した。上記(1)から(3)で得た基礎データに基づき、生体電位のバイオリズムに連動した本格的な制御型光源装置の基本設計をした。次年度は更に発展させ、生体電位応答特性に連動した、本格的な至適栽培技術の開発に取りかかる。
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