現在の味センサの出力はセンサ素子固有のパターンであるため、利用者にとって判りやすい出力形式ではない。この出カパターンを基本味強度に変換することが本研究の内容である。成果を以下に示す。 1.複合味溶液に対する味センシングシステムの応答特性 味センサの複合味溶液に対する応答特性は充分に把握されていないため、基本味物質の種類と濃度の組み合わせに対し応答特性を求め、データベースを作成した。ケーススタディとして、自然塩による食塩水に対する応答特性も求めた。 2.複合味溶液に対する人間の官能評価試験 複合味溶液に対する人間の官能評価を行った。ケーススタディとして、自然塩による食塩水に対して官能評価を行い味センサの出力と比較した。その結果、味センサの出力と官能評価は複合味の相互作用に共通性があることを確認した。 3.味センシングシステムの複合味応答による基本味の推定システムの構築 複合味は相互作用によって単独味の線形和にならない。そこでニューラルネットワークを用いた変換プログラムを作成し、良好な学習結果を得た。 4.基本味物質による複合味溶液の味強度推定 複合味溶液に対する味センサ出力のデータベースを、ニューラルネットワークによる味強度推定システムに入力し、学習させた。本推定システムでは、大半の複合味溶液の良好な濃度推定が得られた。 5.食塩の苦味の再現 ケーススタディとして、食塩に含まれる苦味の強度推定を行った。苦味物質は負荷電性物質と正荷電性物質に分けられ、味質は同じでも味センサの出力パターンが全く異なる。このような特殊なケースでも、本推定システムは良好な推定結果を示した。 以上の結果より、複合味溶液に対する味センサ出力のデータベースを作り適切なニューラルネットワークを構築することで、味センサ出力を基本味強度という客観的指標に変換することが可能となった。
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