研究概要 |
音の検出手段として、種々の振動膜式マイクロホンが用いられてきた。本研究では、振動膜等の物体を一切使わず、レーザ光により音を直接検出する方法、あるいは光の中から音情報を取り出す方法(以下,「光波マイクロホン」と総称)の技術確立を行うことを目標としている。光波マイクロホンは、空中音波の位相変調作用によって発生した極微弱回折光を検出することにより、可聴音を検出・再生しようとする試みであり、微弱回折光の検出にはフーリエ光学系を含む光学情報処理システムを用いる。本年度は、受光レンズ以降の光学情報処理システムの構成と特性、特に光学系をどのように組めば音検出が最適化されるか等について理論と実験の両面から検討し、これにより光波マイクロホンの光学情報処理部の構成法を確立することを目的とした。具体的な結果を以下に要約する。 実験では、光源として赤色半導体レーザ光(6mW、ビーム直径4mm)を、音源には20kHz超音波素子を用いた。レーザビーム点での音圧は90dBとした。音場を通過した光ビームに含まれる音波情報は光検出器(フォトダイオード)により検出し、光回折像の測定、SN比の検討などを行った。さらに超音波素子を光軸に平行に移動しながら、光検出器からの音出力信号の変化を測定した。その結果、光学系への音入射位置による信号強度の変化は、光情報処理の理論的予測とおよそ一致することなどが確かめられた。すなわち、光学レンズ配置及びレーザビーム伝搬形状(平行光、発散ビーム光、収束ビーム光、それらの中間的な光ビーム、等々)により、観測面より見てフーリエ変換の関係になる位置に音が入射した場合は音信号が強くなること、逆にフーリエ逆変換に相当する位置に音が入射した場合には音は検出されないこと、などが明らかになった。これらの結果より、光波マイクロホンの光学系構成法や最適化指針の基本をおよそ明らかにすることができた。
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