研究課題
本研究では、振動膜等の物体を一切使わず、レーザ光により音を直接検出する方法、あるいは光の中から音情報を取り出す方法(光波マイクロホン)の開発研究を実施した。同法は、空中音波の位相変調作用により発生した極微弱回折光を検出することで可聴音を検出・再生しようとする試みである。微弱回折光の検出には光学情報処理システムを用いるが、光学システム(特に音検出部にあたる光ビーム構造)をどう組めば可聴音の検出が最適化されるか、あるいは任意のニーズに適う音受信特性が実現できるか、などについては未解明の部分が多い。本研究では、光学情報処理部及び音検出アンテナ部の検討、両者の総合化による光波マイクロホンの基礎技術の確立などを行うことを目的とした。本年度は、1本のレーザビームを立体的に伝搬させた場合の指向特性に焦点を絞り、比較的単純な立体形状(2次元構成)に対し実験及び理論的検討を行った。さらに周波数による違いも検討した。また、光信号増幅と指向性向上を意図した準らせん状多重反射器を作成して性能を測定し、これをダブルビームの特性と比較検討して多重反射光学系応用時の問題点や改善法を明らかにした。具体的な内容を要約すると、次のようになる。ルーフミラーを用いて左右反転反射したダブルビーム形の受信用光ビームを構成し指向特性等について理論及び実験の両面から検討を加えた。その結果、2つのビームを含む水平面内で音を水平方向に入射し、光ビーム間隔を変化させた場合、音波波長の半波長毎に光回折信号強度が強め合う。逆に、波長間隔毎に弱め合い全体として周期的に変化する。従って、ビーム間隔を音波波長より十分短く設定した場合には、垂直方向に強い指向性を得ることができる。一方、ビーム間隔が音波長に近い場合は、指向特性は少し複雑になる。レーザビーム間隔を1波長及び1.5波長とした条件で、各周波数での指向性を実験的に求めた。入射角が0°から360°まで回転する間にいくつかの信号強度の強いピーク点が現れ、指向特性は星形の形となる。この他、準螺旋状のレーザビーム構成の実験を若干行い、低周波の感度を上げることが可能なことなどを示したが、光学系が音場を乱すなどの問題が生じた。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
日本音響学会誌 62巻8号
ページ: 571-579
光アライアンス Vol.17, No.12
ページ: 34-37
IEEE.Trans.Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control Vol.53, No.4,
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