研究概要 |
近年,ロボットの知能は,制御系単体から創り出されるものではなく,制御系と機構系,そして環境の三者間の相互作用を通して創発する,ということが認知されつつある.このことは,ロボットを設計する際には,その初動段階から与えられた機構系の特性を積極的に活用するような制御方策を検討するのみならず,制御方策の潜在能力を引き出すように機構系の特性をも併せて改変することの重要性を示唆している.これは換言すれば,ロボットの制御系と機構系の設計は分離独立して行なうことができない,ということになる. そこで,本研究では制御系と機構系の有機的な連関のさせ方を,特に学習の観点から考察することを目的としている.具体的には, ●両システムの複雑性が調和した状態とはどのようなものか? ●両システムが調和した状態の下で学習を行なわせると,どのような興味深い特性が創発するのか? といった事項を明らかにすることを目指している. 平成16年度では多脚歩行ロボット,ならびに複数の体節から構成される車輪型ロボット(各体節の車輪は一定の周期で回転・静止を間欠的に繰り返すような運動を行う)の自律分散的制御問題を事例として採り上げ,制御系と機構系の有機的な連関のさせ方に関して考察を進めてきた.その結果,学習の効率を大きく改善する際には,制御系と機構系の間に興味深い組み合わせが観察された.さらに,実装する学習方策と機構系の構造によって規定される学習曲面との連関性の議論のためには,学習曲面ランドスケープの形状が体節間の長距離相関の度合いによって効果的に改変可能である必要性が明らかとなった. この考察に基づき,平成17年度では,これまで用いてきた車輪型モデルの発展として,長距離相関がより顕在化されるヘビ型ロボットを用いてさらなる議論を進める.また,実機を用いた実験的検証も併せて行う予定である.
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