海洋コンクリートの凍害機構を解明するために、海水と淡水中で冷却速度が異なる凍結融解試験を行いセメントペースト中の水分の挙動がスケーリングに及ぼす影響について検討した。この結果から得た知見を以下に示す。 水セメント比が50%の海水あるいは淡水に28日間浸したモルタル供試体(φ1×2cm)を用いて最低温度を-30℃、冷却速度を0.25℃/minと0.5℃/minの2種類とした凍結融解試験を海水あるいは淡水中で行った。なお、凍結融解試験は1サイクルを5時間とし12サイクルまで行った。 海水浸漬供試体では凍結融解サイクルに伴いスケーリングが増加した。特に、その傾向は冷却速度が0.25℃/minの凍結融解作用を受けた場合に顕著となった。一方、淡水浸漬供試体では冷却速度やサイクル数に関わらずスケーリングは発生しなかった。 冷却速度が0.25℃/minの凍結融解作用を受けた海水浸漬供試体では凍結融解サイクルに伴い細孔水率が増加し、セメントペーストに水分が浸入しやすい状態となった。さらに、示差走査熱量分析を用いて凍結水量と凍結水率を求めた結果、冷却速度が0.25℃/minの凍結融解作用を受けた場合では冷却速度が0.5℃/minの場合に比べ凍結水量と凍結水率が増加した。淡水浸漬供試体では冷却速度やサイクル数に関わらず細孔水率、凍結水量と凍結水率は増加しなかった。このことから、冷却速度が遅い凍結融解作用を受けた海水浸漬供試体ではセメントペーストに海水が浸入しやすいことに加え、浸入した水分が凍結する割合も大きいため水分の凍結によって生じる圧力が増加しセメントペーストを劣化させたと考えられる。この作用によって冷却速度が遅い凍結融解作用を受けた海水浸漬供試体ではスケーリングが発生しやすい状態になることが明らかとなった。
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