研究概要 |
建設投資の動向を考えると今後は漸減となることが予測されており、しかも既往の施設を所要の機能が保持されるように維持管理を実施することの重要性が指摘されており、新設に対する投資は大幅に抑制される状況にある。このため、ライフサイクルにおけるコスト管理は重要な課題となっており、LCC(Life Cycle Cost)で経済性を評価する必要がある。一方、2005年2月の京都議定書の発効によって、地球温暖化防止対策は緊急の課題となっており、必然的に環境に対する配慮が求められる趨勢にある。建設関係でも資材製造によるCO2排出量は日本全体の物質使用量の数十%を占めているといわれており、LCMの観点から環境負荷に対する検討が必要される状況である。 LCCに関しては研究室で長らくの実績があり、主に桟橋を対象として劣化予測を実施し、確率的手法や期待費用最小の法則などを応用した算定手法を提示してきている。これらの計算では補修工法の相違も検討してきた。 一方、LCMに関しては主にLCCO_2の算定に焦点を当てた研究を実施してきた。これらは、環境税をLCCO_2に組み込むことの可能性及びその影響の度合い・一連の施設の建設・供用・解体・廃棄におけるLCCO_2の算定、施設建設における材料の種類やコンクリートに品質によるLCCO_2の相違などを検討してきた。環境負荷に関してはさらに進めて、コンクリート構造物の供用年限における想定される項目(CO2,SO_x, NO_x,ばいじん)を取り上げて、LIME(産業環境管理協会)で提案されている手法を用いて:負荷評価を算定した。 コスト(LCC)と環境負荷(LIME)の双方を総合的に評価する手法として、総合評価落札方式の考え方を参考にして検討した。すなわち、評価値=(得点)/(コスト)において、主な方法として(コスト)にはLCCの値を考え、(得点)ではLIMEの値を考慮することとした。 上記考え方を既存構造物に適用することを試みた。すなわち、供用期間100年を想定した4箇所のRC桟橋(一部、PC桟橋を含む)であり、初期建設段階、補修を考慮した維持管理段階を含むものである。構造物の維持管理方法としての工法としては、表面被覆工法、電気防食工法、断面修復工法を取り上げた。算定結果から、本法によってコストと環境負荷を総合的に評価する一手法を提示することができた。
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