研究概要 |
本研究は脆性破壊の第一段階に相当する延性き裂の発生に着目し,延性亀裂の発生状況を把握するために,解析モデルとして切欠きを有する円筒形棒部材を用い延性き裂の発生をシミュレーションした.その際,大ひずみ領域における断面欠損を表す手法としてVoidを導入した.Voidの考慮により,延性き裂発生過程を追うことができた.また,Voidの体積分率から延性き裂発生の破壊基準を決定し,延性き裂発生条件式を提案した.さらに,局所ひずみと全体ひずみの相関を示し,延性き裂発生限界ひずみ(延性破壊ひずみ)を求めた.本研究で得られた主な結論をまとめると以下のようである. (1)大ひずみ領域で生じる部材の断面欠損による荷重の低下を本解析モデルによって表現することができた. (2)Voidは,き裂底表面型の延性き裂とき裂内部型の延性き裂を捉えることにも有効な手段と言える. (3)既往の実験結果と比較することで,延性き裂発生の破壊点をVoidの体積分率と定めた. (4)切欠き底表面型において,切欠きが鋭いと切欠き底表面でVoidが最も大きく成長した.切欠きが鈍いと切欠き底表面から若干内部でVoidが最も成長した. (5)素材特性が相当塑性ひずみ-応力三軸度関係に及ぼす影響は小さい. (6)切欠き深さが相当塑性ひずみに及ぼす影響は,切欠きが深くなると相当塑性ひずみが小さくなる.また,同じ切欠き半径でも,切欠き深さによってき裂底表面型と亀裂内部型に分かれる.さらに,切欠き深さが大きいほど,また切欠き半径が小さいほど三軸応力拘束が強くなることがわかった. (7)切欠き形状が応力三軸度に及ぼす影響は,切欠き半径が大きくなると応力三軸度が小さくなる. (8)き裂底表面型とき裂内部型の境界は,切欠き形状と切欠き深さの両方によって変わってくる. (9)延性き裂発生の破壊点から延性き裂発生条件式を提案した. (10)グローバルひずみ-相当塑性ひずみの相関を得た. (11)構造ディテールの3次元解析を実施する場合の延性き裂発生限界ひずみの算出法を示した. (12)はり要素を用いる解析を実施する場合の延性き裂発生限界ひずみを求めた.
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