研究概要 |
本研究では脆性破壊の第一段階に相当する延性き裂の発生に着目し,鋼製橋脚の破壊実験を行った.既往の研究で提案されている延性き裂発生条件式の精度を検証し,解析的にき裂発生点近傍のひずみ挙動を追究した.さらに,ファイバーモデルによる解析では模擬できないひずみ集中現象をShell要素を用いた解析によりとらえ,構造ディテール係数を提案し,新しい照査法の枠組みを示した. 本研究で得られた主な知見を以下にまとめる. 1)実験的検討 (1)全ての供試体について,鋼製橋脚基部に発生する脆性破壊現象を実験的に再現できた.(2)延性き裂は繰り返しひずみ硬化の影響による強度増加の段階で発生する.(3)延性き裂の発生後,ただちに供試体が強度低下を生じることはない.(4)延性き裂は供試体基部の溶接止端部から発生し,初期の段階は板厚方向に進展し,その後溶接線に沿って進展し,やがて母材へ進展する.(5)き裂が母材へ進展すると,供試体の強度が急激に低下する. 2)解析的検討 (1)荷重-変位曲線は,き裂が発生するまでは精度良く一致している.(2)エネルギー吸収量について,実験値と解析値は非常に精度良く一致しているが,若干実験値の方が解析値を下回る傾向がある.(3)延性破壊点における累積エネルギー吸収量は厚肉構造であるほど大きくなる.(4)延性破壊点に至るまでの繰り返し数は3サイクルの方が小さい値となっているが,エネルギー吸収量に及ぼす載荷履歴による影響は少なく定量的な評価は困難である.(5)延性破壊点における有効ひずみ量は厚肉断面であるほど,大きくなるが,その値は7.5〜11%程度であった. 3)延性き裂照査法の提案 (1)材料レベルにおける延性き裂発生の限界ひずみをそのまま適用すると,危険側の評価となる.(2)角部に集中するひずみとBeam要素の軸ひずみの比から,構造ディテール係数を提案した.(3)構造ディテール係数を考慮した照査法を提案し,それにより算定した終局変位は本実験結果とほぼ一致した.
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