研究概要 |
本研究の目的は,社会基盤施設の健全度を診断するため,1)構造物の複雑な復元力特性を構成方程式に捉われることなく同定する手法を開発し,その適用性・安定性に関する基礎的な検討を行うとともに,2)計算の効率性・収束性などの観点において従来のパラメータ同定手法よりも優れたシステム同定アルゴリズムを提案することにある.さらには,3)これら同定手法を実際の地盤特性や構造物の経年変化・損傷度の評価に適用することにより,提案手法の検証を行うことである. 本年度の上半期においてはシステム同定手法として下記に示すような手順で新アルゴリズムを提案し,それを実データに適用することにより提案手法の有効性を検討した. 1)強震時に非線形な履歴挙動を示す地盤や構造物の複雑な復元力特性を,荷重-変形あるいは応力-歪関係を表す構成方程式で表現した履歴曲線で与え,構成方程式に捉われないシステム同定手法として多面型履歴モデルを用いた定式化を行った. 2)システムの物理的な意味を失うことなく,柔軟性に富んだネットワーク構造を組み立て,このネットワークを最適化することにより,非線形履歴挙動を示す構成方程式ならびにパラメータを同時に同定した. 本年度の下半期においては線形領域から非線形領域まで表現できる汎用性のある構成方程式(多面型履歴モデル)を明示的に与え,パラメータのみを効率的に同定する手法として3つの方法(ウェーブレット変換を用いる方法,重点的サンプリングフィルタ法,棄却法)を提案した.数値計算を実施して従来の方法(カルマンフィルタ,モンテカルロフィルタ)と比較分析することにより,提案手法の妥当性を検討した結果,手法の有用性が明らかになった.
|