研究概要 |
本年度研究では、標識柱・照明柱などの橋梁付属物の疲労損傷に着目し、それらの中での代表例として複雑な挙動を示しかつ重心の高いF型標識柱を選定した。実物大モデル試験により疲労破壊の起こりやすい長柱基部について、疲労実験を行うことにより、ひずみの時刻歴分布状況を解明することができた。 また、現場施工を前提とした新素材である紫外線硬化樹脂(UV-C-FRP)を用いての補強を提案し、疲労試験によって耐久性の差異を実負荷を与えて比較検証した。これらの一連の手法により,既存付属構造物の延命効果が期待できることがわかった。以下に本年度の研究にて得られた結論をまとめる。 (1)本実験のひずみ量の計測により、それぞれの繰り返し荷重に対しての初期ひずみからき裂発生点のひずみ範囲を繰り返し荷重±33kNでは400μ〜600μ、繰り返し荷重±42kNでは500μ〜700μ、繰り返し荷重±52kNでは600μ〜800μとおおよそ特定することができた。 (2)疲労試験においては、UV-C-FRP補強を行うことにより無補強時と比べ、破壊点に至るまでに、繰り返し荷重±33kNでは1.5倍、繰り返し荷重±42kNでは1.6倍程度の疲労寿命の延命効果が期待できる。ただし,繰り返し荷重±52kNでは、水平力載荷試験で得られた降伏荷重の1/3を超えており補強効果を充分に確認することができなかった。 (3)初期剛性の近い無補強供試体とFRP補強供試体を比較した結果、基部のリブ上端部に紫外線硬化型樹脂補強を行うことによりき裂発生後、剛性が急激に低下するまでの繰り返し回数が±33kNでは1.5倍、±42kNでは2倍程度延びていることが確認できた。つまり、疲労寿命の延命効果の原因として、供試体の剛性の低下速度を抑制する効果、疲労き裂の進展を抑制する効果があることが確認された。
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