研究概要 |
本研究では、実物大の長柱の疲労試験を行うことで、応力集中部であるリブ上端部にUV-C-FRPシートを貼り付けて補強することで、繰り返し荷重±33kN,±42kNにおいて,疲労等級がE等級からほぼD等級程度まで上昇することがわかった。 次に構造解析において,UV-C-FRPシートで貫通き裂を有する供試体のき裂開口部を覆うことにより、き裂進展速度を無補強時の1/2程度まで減少させることが確認できた。また、応力拡大係数の下限界応力拡大係数範囲付近においては、き裂進展速度を無補強時の1/4程度まで減少させることも確認できた。 このような結果から,UV-C-FRPシートによる補強は、供試体にかかる応力自体を低減しているのではなく、き裂開口部の応力のみを分担して低減していることがわかる。一般に、弾性係数の低い材料で鋼に代表される弾性係数が高い材料を補強しても、補強効果はあまり認められないとされている。しかし、き裂を有する場合においては、弾性係数が低い材料でも補強効果が十分に期待できることを本研究により確認できた。これにより、新素材である紫外線硬化型樹脂の補強対策により、疲労寿命延命効果が期待できることがわかった。 一方、これと平行して実用化をした多方向転動型同調質量ダンパー(MTRMD : Multi-direction Tuned Rolling-Mass Damper)を監視用ITV柱の制振対策として設置した。さらに現地にて1年間にわたる連続計測を実施し、MTRMDの耐久性確認を行った。ここで取り上げた監視用ITV柱は、大型車両交通量増大にともない支柱の振幅が大きくなり、適切な映像を得ることが困難な状況となっている。これにより揺れの大きな柱に関して、制振効果を確認すると伴に、基部の応力低減により疲労強度を向上させることができた。 以上の研究により、柱の基部のUV-C-FRPシート補強と柱への多方向転動型同調質量ダンパーの設置により、柱の疲労強度を大幅に向上させることが可能であることが判った。
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