研究概要 |
土木,建築構造物において,鋼製部材は古くから多く用いられており,今日では高強度材料の実用化に伴いこれら部材の軽量薄肉化が進んでいる.しかしながら,薄肉の鋼製部材を使用する場合,特に注意しなければならないことは,周辺環境や経年変化による腐食,劣化や微小欠陥が存在することで,繰り返し加重による疲労破壊や地震などの作用荷重により,構造物の倒壊など致命的な損傷を受ける可能性を有していることである.このような薄肉の鋼製部材の破壊を防ぐためには,周知のとおり構造物の維持管理の過程において,部材の劣化損傷を種々の非破壊検査により事前に検出する必要がある. そこで本研究では,薄肉鋼製部材を対象に,その健全性を非破壊検査により評価するための簡便的な一次的検査手法の開発を目的として,薄肉部材内に存在する劣化損傷部を,部材表面を伝播する波動の散乱状態の可視化により検出することを試みたものである.特に本研究では,薄肉平板のもつ構造的に揺れやすいという特性を利用し,波動源としは超音波ではなく,圧電セラミックス振動子等による比較的低周波の波動を用いた非破壊検査法を提案した. 本研究では最初に,波動伝播特性を利用した劣化損傷部検知手法の評価と劣化損傷度の評価法を数値解析により定性的かつ定量的に検討を行なった.次に,数値実験により評価された劣化損傷部検知手法を模型実験により検証,確認し,実際の非破壊検査手法への適用性の検討を行った. 最終的に,数値解析的,実験的にも本研究で提案した低周波の波動伝播特性を利用した欠陥検知手法の有用性が確認された.さらに,実際の欠陥検知を想定した具体的な検知方法として,スライド法とレーダー法を提案し,各々の手法の検知評価特性についても数値解析的および実験的に明らかにした.その結果,本研究で提案した低周波振動法による欠陥検知の実用化への可能性が高いとの結論が得られた.
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