研究概要 |
せん断崩壊する鋼はり腹板のひずみ速度依存性と門形ラーメンの地震応答について,2年間に亘って研究した.研究成果の概要をまとめると,以下のとおりである. 1.高速せん断力載荷による腹板の弾塑性応答実験の実施, 鋼板に高速せん断載荷できる実験装置を用いて,33〜154の幅厚比を持つ鋼腹板(約50体)の弾塑性性状に及ぼすひずみ速度依存性を実験で調べた.せん断変形角速度による抵抗せん断力の変動特性を分析することにより,以下の知見を得た. 1)腹板のせん断応力τ-せん断変形角γの実験曲線は,幅厚比が大きい場合にはスリップ型,幅厚比が小さい場合には紡錘型の履歴曲線を呈した. 2)抵抗せん断応力の静的曲線からの上昇分を指すせん断余応力は,せん断変形速度に比例して大きくなる. 3)せん断余応力の上昇は弾性域から塑性域に至る処女履歴ループにおいて最も大きく現れる.そして,それ以降の履歴ループではひずみ硬化の影響により,ひずみ速度の影響が小さくなる。 4)せん断変形角速度によるせん断余応力の上昇を近似曲線にまとめた. 2.三次元汎用FEMによる鋼門形ラーメン橋脚の弾塑性応答解析の実施 地震動を受けて,はり中央腹板と柱基部が損傷する1層門形ラーメンの弾塑性応答解析を実施し,はり中央腹板がせん断座屈したときのラーメン各部の損傷について考察した.数値解析の結果から,局部座屈を伴うはり中央部分と柱基部の損傷について考察し,はり腹板が損傷することにより,柱基部のダメージを軽減できることを確かめた. 3,結論 1)鋼腹板を用いて高速せん断力の載荷実験を実施し,ひずみ速度による抵抗せん断応力の変動特性をほぼ把握することができた.ただし,その定式化には今後若干の追加実験が必要である. 2)上記のせん断応力-せん断ひずみ関係を骨組の動的弾塑性解析プログラムに組み込むことにより,橋脚の地震時崩壊挙動をさらに究明していくための準備が整った.
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