昨年度の実験の麻果、小振幅の自発振動に対してはヘリカルワイアが高い制振効果を持ち、ワイアの巻き方によらず完全に完全に振動を抑制できたものの、外乱を加えた場合に発生する大振幅の振動に対する制振効果が十分ではなく、ピッチ7Dで上下流の円柱に同方向にワイアを巻いた場合のみ、振動を抑制できることが分かった。しかしながら、この実験ではワイアの巻き方がラフでピッチが不揃いな部分があったこと、上下流円柱のワイアの位置に注意を払っていなかったことなど、現象を考察するうえで不都合な部分があった。ワイアを巻いたことによる応答の変化は、ウェーク・ギャロッピングの発生メカニズムを解明するうえで貴重な情報を含んでいると考え、本年度はこの部分に着目した実験に重点をおいて研究を進めた。 昨年度と同じ粂件で、ヘリカルワイアのピッチを完全に揃えた上で、ワイアの円柱軸方向の位置を上下流の円柱で同じとした場合(位相0°)、ずらした場合(位相30°、60°)の応答を観測した。実験の結果、位相0°では高い制振効果を示したのに対して、位相60°では高風速で大振幅の振動が発生した。位相0°では上下流円柱の剥離点付近にワイアが配置されている部分と、配置されていない部分が軸方向に交互に存在する。タフトを用いた可視化から、剥離点付近にワイアがある部分では流れが上下流円柱の間に強く巻き込むのに対して、ワイアがない部分では接近流に平行に近い流れとなることが明らかになった。このような異なった流れが軸方向に交互に存在することがヘリカルワイアの制振メカニズムであるとすれば、螺旋状のワイアでなくとも、円柱軸に平行に配置したワイアでも、同じような効果を生むのではないかと考え、平行ワイアを用いた実験を行った。その結果、期待したような効果は得られず、前述したようなストリップ理論的な考え方では、ワイアの制振メカニズムを説明できないことが分かった。 可視化によれば、ワイアからの剥離流はワイアに直角になる傾向があり、軸方向流が発生している。今後は、この軸方向流の影響も考慮に入れてワイアの制振効果を解明し、最終的にギャロッピング発生メカニズムの解明につなげたい。
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