円柱間隔2D、3D、4D(Dは円柱直径)で下流側のみ弾性支持した1自由度応答測定実験を行った結果、無次元振幅Y/Dが1以下の比較的小振幅の振動は、一般的な空力弾性振動と同様に無次元風速に支配される現象であるが、間隔2Dで強制加振後に現れる大振幅振動はむしろ風洞風速に支配されているように見えることが分かった。下流側円柱に圧力計測孔を設けて、定常および非定常圧力を測定した結果・下流側円柱の揚力は上流側円柱後流内の圧力場から決まるS字形に変化する揚力と、両円柱間に気流が流れ込むギャップ・フローによるピーク状揚力によって特徴付けられることが明らかになった。非定常揚力から空力減衰と振動振幅の関係を求めた結果、無次元風速に支配される現象は空力負減衰に起因するものであること、この負減衰は変位と逆符号の揚力の位相遅れによることが分かった。しかし、加振後に現れる大振幅振動に関しては、空力減衰が正であり、その発生メカニズムは本研究の範囲では明らかにできなかった。 ウェーク・ギャロッピングの制振対策としてヘリカル・ワイアの有効性を調べた。その結果、比較的小振幅の応答は、ワイアをどのように巻いても効果的に制振できることが分かったが、加振後に発生する大振幅の振動は限られた条件の下でしか制振できない。実験した範囲内では、ピッチを7Dより大きくし、かつ上下流円柱におけるワイアの位置を揃えた時に最も高い制振効果が得られた。逆に上下流円柱のワイアの位置をずらすと、ワイアのピッチや円柱間隔によらず、ほとんどのケースで振動が発生する。上下流円柱のワイアの位置による制振効果の変化を、ストリップ理論的に考えた平行ワイアで調べた結果、平行ワイアの場合はヘリカル・ワイアとは逆に位置をずらした方が制振効果が高いという結果となった。ヘリカル・ワイアによる制振は、ある程度の効果は期待できるように思われるが、効果を発揮する条件を正確に把握し、具体的な設計法を提案するには、軸方向流の影響なども踏まえて更なる研究が必要と思われる。
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