研究概要 |
本年度は,まず,静的シュミレータを用いて行った粒子集合体モデルの応力プローブ試験シミュレーション結果を基に、粒状供試体における滑りの統計的表現方法の提案と、それを用いた粒状体の塑性流動則理論の誘導を行った。滑りの統計的分布特性は滑り面の外向き単位法線ベクトルの4個のテンソル積の平均化として定義される滑動接触テンソルで表される。一方、粒状供試体に応力増分を与えたときの粒子間散逸エネルギーは、統計的考察より、散逸応力テンソルと呼ばれる係数によるひずみ増分テンソルの線形結合式として表現される。なお、散逸応力は滑動接触テンソルを自然な形で含んでいる。散逸エネルギー増分は応カテンソルと塑性ひずみ増分テンソルの複内積としても表現されるので、両者を等値して得られる拘束条件の下で、散逸エネルギー増分を最大化させる条件により、塑性ひずみ増分の方向が決定される。この塑性流動則に基づく塑性ひずみ増分の方向は実際にシミュレーションにより求まったものと極めて良い一致を見ている。 つぎに、動的シミュレータは静的粒状要素法に慣性項並びに粘性項を加え、ニューマークβ法を用いた繰り返し演算により解を求めるものである。本年度は3次元粒子集合体の動的単純せん断3次元解析プログラムおよび等粒径粒子集合体の2次元配列に特化したプログラムを作成したが,動的せん断特性の基本を調べるために,主として後者のプログラムを用いた解析を行った。粒子密度およびせん断速度をパラメトリックに変化させてシミュレーション解析を行った結果,粒子密度によって、粘性流体的挙動および2体衝突流的挙動を示す結果を得た。動的活性度を調べるために、微視的考察からレイノルズ応力を誘導し、密度の低下とともに、レイノルズ応力が飛躍的に増大すること、および、密度が高い場合は境界で観測されるせん断応力に等しくなるという知見を得た。
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