研究概要 |
この研究は,3つの毅階から成り立っている.すなわち,(1)通常の土に比べて黄鉄鉱を多く含む酸性硫酸塩土に,牡蠣殻粉砕物由来の炭酸カルシウムを混ぜ合わせたときのpHの上昇にともなう土中間隙水量の変動メカニズムの解明,(2)牡蠣殻粉砕物を安定材とともに酸性硫酸塩土に混合したときの支持力,強度特性の把握および(3)自然環境下における「酸性硫酸塩土-牡蠣殻粉砕物-安定材混合材料」の長期安定性の確認と剛性の評価である.これらを追究するために実施した室内での化学的,力学的試験および実地での試験施工や追跡調査から,次のような成果が得られた. 1.酸性硫酸塩土のように遊離鉄含有量の多い建設発生土を石灰で安定処理すると,種々の水酸化鉄生成による「吸水反応」や鉄酸化物生成による「脱水反応」のほか,貝殻由来炭酸カルシウムの溶解にともなう「炭酸ガスの揮散」に起因して含水比が変化する. 2.酸性硫酸塩土に牡蠣殻粉砕物を混入すると,土中間隙水の低減と中和作用の進行とが同時にもたらされ,別途添加する安定材の効用を助長する.したがって,酸性硫酸塩土の改良にあたっては,使用する安定材の量を1/3程度少なく見積もることができる. 3.実地に試験的に建設した二層構成路床で1年にわたり計測したインパクト値I_aによれば,当該路床(5工区)の支持力は時間の経過とともに漸次増加し,とりわけ,牡蠣殻粉砕物と安定材との併用によって酸性硫酸塩土を処理した工区では,安定材のみを添加した工区に比べてI_aのみならず動的,静的逆解析で算出した弾性係数も大きくなる。
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