(1)中海の流動現象の解析:中海水域の流動現象を把握するために、シグマレイヤモデルを適用した。中海の外部境界となる境水道の河口部で日本海潮位として大潮潮位を与え、下流端からの強制入射とした。その結果、上げ潮時には、境水道から中浦水門跡を通過して最深部にかけて相対的に強い流れが発生すること、しかし、中海南西部から東部に流れが広がると同時に平均的に流速が低下すること、下げ潮時にも中浦水道から境水道に局所的に早い流れが生じるが、全域的には、底流速域が広がった状況であることがわかった。特に米子漁港付近の湾奥部との海水交換はきわめて低いことがわかった。 (2)中海水域(宍道湖水域を含む)での環境データに対する人工生命技術による評価:中海および宍道湖で観測されてきた水質観測データを対象に、自己組織化マップ(SOM : Self Organizing Map)を利用して、水質ならびに底質変動特性ならびに貝類ならびに環形動物の生息特性分析を行った。その結果、大橋川水域、中海湖岸域、中海中心水域および中浦水門跡から境水道水域において、特徴的に水質、底質分析が出来ること、また、生物に関しては、ヤマトシジミならびにイトエラスピオの生息環境特性が、明確に示された。特に、SOMの分析機能として、今回は水質4項目、底質7項目で解析を行ったが、比較的少ないニューロン数で各水域の類似度ならびに特性を、視覚的に確認できること、卓越項目を同定しやすく本研究のような環境評価に極めて有用であることがわかった。
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