研究概要 |
(1)研究内容: a)現地観測:2000年12月より毎月地盤高測量を継続している熊本県白川河口干潟域の右岸において,岸から約1kmの地点で2004年7月から水位,流速(底面上10cm),濁度(底面上10cmと30cm),塩分(底面上30cm)の連続観測を実施した(サンプリング間隔:水位・流速5Hz,濁度・塩分10分).観測した水位・流速データから最小自乗法を用いて平均流と波浪成分とを分離し,濁度は現地泥を用いた検定試験よりSS濃度に換算した. b)フラックス時系列変動の要因分析:底質輸送フラックスの時系列変動を支配する要因について検討するため,水位・流速・濁度・Relative Tide Rangeなどの時系列との比較を行った.ここで,Relative Tide Range (RTR)はRTR=TR/H_bで定義され(TR:潮位差;H_b:砕波波高),波浪と潮汐の相対的な重要性を表し,地形分類や地形変動の無次元パラメータとしてMasselinkが提案したものである.RTRの値が30以下では波浪の影響が相対的に大きくなると言われている. (2)主要な結論: 1)RTRの時系列は濁度の時系列と相関性が高く,波浪による底質の巻上や浮遊移動を良く表現する無次元パラメータと考えられるが,底質輸送フラックスとの相関性は低い(相関係数0.1). 2)底質輸送フラックスの時系列は1潮汐間の上潮時の岸向き最大流速と下げ潮時の沖向き最大流速の差の時系列と高い相関性が確認された(相関係数0.7).この流速差の変動は,平均潮位が上昇すると岸向き最大流速が沖向き最大流速よりも増大し,平均潮位が下降すると沖向き最大流速が岸向き最大流速よりも増大することを示す. したがって,平均潮位の昇降に伴って平均流速場の非対称性(流速の高次モーメント)が増大することが,干潟地形の堆積・侵食メカニズムの主要因であることが示唆された.
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