茨城県波崎海岸の(独法)港空研の観測用桟橋に約20台の超音波式波高計を設置し、汀線付近の水位および(水の無い時の)砂面高の連続観測を継続した。新たに購入した流速計を用いて平常波浪時に遡上域の流速場の測定も試みた。 得られたデータの解析は前年度の2003年9月時の高波浪によるバーム侵食と今年度の6月末から7月末にかけての高波浪時のバームの発達と侵食の両時期を対象に行った。1時間平均量を用いた議論から以下のことが明らかになった。(1)バームの侵食は、バームが存在する場において水位の上昇、全波浪エネルギーの増大、波浪中の長周期波成分の割合の増加という状況の中で遡上波がバーム頂部に到達することで始まる。(2)侵食は、水位・波浪条件が持続する場合でも、数時間程度でバームが消滅して前浜が緩勾配化して終了する。長周期成分の反射率が低下したためと考えられる。(3)侵食進行時は、遡上域での漂砂量は沖向きに直線的に増加し、ほぼ一様に砂面が低下する傾向を示す。(4)高波浪でも長周期波の割合が小さい時にはバームの発達が観測される。なお、流速計のデータは設置が難しく解析に値するものが取れなかった。 今後は、上記の波浪と地形変化を定量的に関係づけるために、(1)他の地形変化の激しいケースおよび波浪条件の厳しいケースの解析の追加、(2)時間スケールを変えて個々の遡上波による現象に着目した解析を行っていく予定である。さらに流速計を用いた現地観測に再度挑戦し、遡上域における水位と流速場の関係についてのデータの取得と解析を目指す。
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