茨城県波崎海岸の(独法)港空研の観測用桟橋に約20台の超音波式波高計を設置し、汀線付近の水位および(水の無い時の)砂面高の連続観測を継続した。 高波浪によるバーム侵食時期を対象にしての1時間平均量を用いた議論から以下のことが明らかになった。1.バームの侵食は、バームが存在する場において水位の上昇、全波浪エネルギーの増大、波旅中の長周期波成分の割合の増加という状況の中で遡上波がバーム頂部に到達することで始まる。2.侵食は、水位・波浪条件が持続する場合でも、数時間程度でバームが消滅して前浜が緩勾配化して終了する。長周期成分の反射率が低下したためと考えられる。3.侵食進行時は、遡上域での漂砂量は沖向きに直線的に増加し、ほぼ一様に砂面が低下する傾向を示す。4.高波浪でも長周期波の割合が小さい時にはバームの発達が観測される。 より力学的な理解を求めて遡上波一波毎に着目して解析を行い以下のような結論を得た。1.遡上域の地形変化はほぼ一様に上昇/下降を示す。2.遡上域全体の地形変化量(すなわち遡上域沖端での体積漂砂量)は遡上波の打ち上げ時と打ち下げ時の平均シールズ数の1.5乗と作用時間の積の差と正の1比例関係にある。すなわち。遡上波の前傾度が強いほど岸向流速が大きくなり堆積傾向どなることを意味する。3.遡上波と遡上域沖端での波浪中の長周期入射波成分との対応は非常に良く、周期、波形の前傾度はほぼ一致する。遡上の全振幅は重複波としての長周期波の腹に進行波としての短周期成分1が乗ったものとなる。
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