研究概要 |
PFI事業が民間事業と異なる点は,投資家から見た企業価値と公共から見た事業の価値が一致しないことである.そのため,投資家のみに意思決定を任せた場合には,社会的に非効率な結果を招く可能性がある.また,PFI事業における再建計画では工学的専門知識を有することから,金融機関や投資家主導の事業再生は期待できない.不完備契約理論では,将来に起こりうる全ての状況に対して,全ての対処方法を事前に契約で取り決めることができない状況では,権限配分を規定することになり,その対処結果に重大な影響を及ぼすとしている.本テーマでは,契約が不完備である状況を前提としたときに権限配分をあり方を議論する上で,不完備契約モデルによる定式化を行い,最適な事業再生モデルを定式化した.さらに,PFI事業の伸展とともに,リスクに関するデータの蓄積が進むことになる.そこで,どのようなデータを蓄積するべきかという問題とPFI事業のクレジット・リスク計量化のためのプロトタイプモデルを開発した。運営段階の計量化モデルは,通常の民間企業のクレジット・リスク計量化モデルを援用し,PFI事業特有の特徴であるプロジェクト期間の存在及びその資金運用計画を考慮し,建設段階のリスク計量化手法を新しく開発することによって,PFI事業の統合的な事業破綻リスクを計量化するモデルを構築した.また,事業再生スキームが資金調達コストに及ぼす影響に関するメカニズムをモデル化することにより明確化し,事業再生スキームを事前の資金調達の効率性の観点から評価した.
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