研究概要 |
この研究は平成16年からの3年間で,長大斜面の変位を写真計測法と網型GPSを使って検知する技術を開発するものである.長大斜面を常時観測するには粗くても簡便で迅速な観測法が必要である.このために最近ヨーロッパで実用化されたリアルタイム網型GPSを使って,絶対基準点をローカルに作り,写真計測に組み込むことが眼目である.平成18年度はその最終年度であり,総括の年であるが,共同研究者が他所に移ったため研究全体が遅れ,実質の研究年度を引きずった.平成18年度に行った研究活動と成果は次のとおりである. 1.リアルタイム網型GPS測量を使うには基準局が必要であり,国家基準点である電子基準点をそれに使うことを考えていたが,前年度までの長期観測で信頼性に疑問が起きた.そのため本年度はシミュレーションを中心にして,GPSの広域座標系と写真計測の局所座標系を接続するための,撮影形態やGPS受信機の位置などを検討した.野外実験で補足している.GPS受信機の周囲に写真計測のターゲットを置いて,両座標系を接続する.成果は2007年6月の写真測量学会に発表する. 2.写真計測のターゲットを撮影するだけで,初期変位が生じたかを検知するための仮説検定の式を導き,正しく機能することをモデル実験で確認した.仮説検定はフリーネットワーク調整の式を基礎にするため,従来のように絶対基準点や不動点(変位しない点)を必要としない.そのかわりターゲットは比較的密に必要である.論文は土木学会論文集に投稿中であり,2007年6月の写真測量学会で発表する. 3.工業写真計測の応用として,原子力発電再処理プラントのメンテナンスに適用した.重量20トンを超える機器とパイプのリバースエンジニアリング(現場計測による取替え)で,作業の安全性を向上し,期間,コストを大幅に短縮させた.
|