本研究では、嫌気性微生物処理の処理水質向上を目指し、最初沈殿池越流水を対象として減圧式上向流嫌気性スラッジブランケット(UASB)型リアクターによる下水処理実験を実施した。また、後処理として栄養塩類除去実験も実施し、トータルシステムとしての検討を行った。 UASB型リアクターは容積7.9Lで、そのうち1系列目は対照系、2系列目は微量金属添加系、3系列目は減圧運転系(約0.08MPa)とした。水温9〜30℃、滞留時間2時間前後で数ヶ月間運転した結果、流入水水質の変動の大きさ、リアクター内に蓄積した汚泥の突発的な流出などもあり、処理方式間の差を判断しづらかったものの、対照系に比較して減圧素および微量金属系では平均処理水質が優れていた。このような短滞留時間ではUASBは浮遊物質除去装置として主に機能し、減圧系および微量金属系は脱気や凝集作用により汚泥浮上を抑制しやすいと考えられた。 循環式硝化脱窒と鉄材を用いた脱りんを組み合わせた後処理は、無酸素ろ床(容積5L、容積の30%相当のスポンジ担体)、好気タンク(同10L、鉄製金網1kg)および沈殿池(同6L)からなるものであった。滞留時間は無酸素ろ床約2時間、好気タンク約4時間で、循環量は約100%、返送汚泥量は約50%、好気タンクDO濃度は2〜3mg/Lになるように調節し、汚泥の引き抜きはほとんど実施しなかった。84日間の実験の結果、水温は27℃から7℃まで低下したが、好気タンクの処理水質はBOD、TOCおよびSSがほとんどの場合10mg/L以下と良好であった。水温が低くなるとNH_3-Nが増える傾向にあったものの、ほぼすべての分析についてT-N10mg/L以下、T-P1mg/L以下が達成された。嫌気性微生物処理が適切な後処理プロセスと組み合わされることによって、有機物のみならず窒素・りんの同時除去が可能なことが実証されたと思われる。
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