この研究の目的は、汚水の生物処理における処理機能を格段に向上させる可能性がある接触担体のあるべき姿や設計要因を明確にするため、第1に接触酸化生物処理用に市販されている担体の材料・形状による微生物の付着性・増殖性の差異を評価し、第2に接触微生物膜の増殖特性並びに低減特性を、生物膜厚さと基質低減速度から解析し、第3に増殖微生物群の低減化機構の明確化(原生動物の役割・嫌気性分解作用など)を視覚的に捉えて定量化し、必要担体量や形状に関する合理的な設計基準の作成に寄与することを目指した。 第1点については、基礎実験を実施し、別添報告書のごとく、7種類の担体について流動性、単位表面積あたりの付着微生物量を定量評価し、成果を論文にまとめ、審査中である。 第2点については、実験装置による人工下水を用いた実験で、汚泥の増殖速度、担体からの剥離速度、自己分解速度並びに浮遊性汚泥の増減の挙動などについて、これら因子の相互関連を解析するため、微生物量を蛋白質量で定量把握し、摂取速度をCOD変化量として把握した。それぞれの機能を具体的な数値で表示し、シミュレーションで相互因子間の関連を明確とした。これら成果を論文としてまとめ、審査中である。 第3点については、最終報告書に記載のごとく、付着生物が増殖する担体の顕微鏡写真を撮り、接触担体上に生育し、活性のある汚泥の脱水素酵素活性を計測するための染色法を活用した。活性のある汚泥の存在場所の特定かつ存在量を定量化する努力を試み、ランダムに付着する汚泥量の定量化手法の開発を進めた。これらにより、生物接触担体のあるべき姿や付着微生物量を定量化するための基礎技術を開発出来たものと思う。
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