研究課題
基盤研究(C)
本研究により、結果次のような成果を得た。1)底生生態系の破壊機構の解明ホトトギスガイを低酸素、高温にて死亡させその遺骸が分解される過程での酸素消費速度を酸素消費測定装置を作成することにより測定した。その結果に基づき遺骸の酸素消費速度が死亡からの時間に関する指数関数として定式化した。その速度は初期において呼吸速度の3倍程度となること、並びにその速度は温度と共に増加することを示した。2)底生生態系破壊状態の持続機構の解明ホトトギスガイの遺骸の酸素消費が貧酸素水塊の拡大へとつながるモデルを作成し、平成13年における博多湾の酸素濃度に関するシミュレーションをおこなったところ、導入しないモデルに比較し、現況をよりよく表すことをしめした。とくに、既存のモデルでは底層の貧酸素水塊の発生を説明することができなかったが、本モデルにより説明可能となった。さらに、潮汐による移流と乱流拡散を流動場における輸送現象とし、分子拡散を水塊・底泥系における輸送とし、窒素、りん、DO、植物プランクトン、動物プランクトンの消長を含んだ博多湾生態系モデルに、前年度に開発したホトトギスガイ(本貝と呼ぶ)の着底、成長、死滅ならびに遺骸の分解過程における酸素消費を含んだ酸素消費と貧酸素水塊の発生モデルを構築した。本モデルを用いて生態系破壊の博多湾におけるシミュレーションをおこなった。これにより、それまでに不可能であった、博多湾底層の貧酸素化を説明することができた。博多湾における本貝のサイズ分布、底層酸素濃度、底質のABS、酸化還元電位の経月変化の調査結果より、それまで、不明であった本貝の着床に及ぼす底層のDOと底質のABSの影響を解明できた。すなわち、夏季における本貝の着床時期に、AVS=0.35+0.16DOよりAVが高い場合は着床が強く阻害されることを示した。
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すべて 雑誌論文 (10件)
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