研究概要 |
生理的活性のある細菌を直接蛍光顕微鏡下で検出する方法として、DVC法,マイクロコロニー法,CTC法,BacLight法の4つの手法を検討し、これらの方法とDAPI染色による全菌数計数法および平板培養法を用いて青森県内の河川や排水中の細菌数を測定し、水環境中の細菌の挙動についてまとめた。河川水では、平板培養法で測定した生菌数はDAPI試薬で検出される全菌数より2〜5オーダー程度少なくほとんどの細菌が平板培養できなかった。一方、排水処理施設では曝気槽流入水,最終沈殿池流出水および処理水について細菌数を計測したが、3つのサンプルとも生菌数と全菌数の差は小さく1〜2オーダーしか違いがなかった。また生理的活性のある細菌の数は、河川水も排水処理施設内の排水も生菌数と全菌数の中間に位置し、生菌数よりかなり多く検出された。従って水環境中には生理的活性があるのに培養できない細菌、つまりVNC状態にある細菌が多数存在することが確かめられた。消長実験の結果、これらの細菌は比較的長期間にわたって活性を維持できることが明らかになった。VNC状態の細菌に対する塩素消毒効果は、大腸菌を使用して20℃、pH7.2の条件で検討した。培養法で計測された大腸菌数は塩素処理前に比べて3〜6オーダー低い値となった。一方生理的活性のある細菌を計測する4つの方法で求めた大腸菌数は、処理前に比べて処理後は1〜3オーダー程度しか菌数が減少しなかった。培養法で検出される細菌数よりかなり多くの活性のある細菌が塩素消毒後も残存しており、従来の培養による計測方法は塩素消毒効果を過大に評価していたと考えられる。塩素処理に伴う不活化率とCT値(残留塩素濃度と時間の積)の関係から求めた不活性速度定数左は、生理的活性のある細菌を計測する4つの方法とも大差が無く培養法の1/2〜1/3程度であった。
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