研究概要 |
無加温UASB/DHSシステムを用い,都市下水処理場にて運転日数700日を越える長期連続廃水処理試験を行った結果,以下の知見が得られた。 (1)処理水の全BOD平均値が夏期:11mg/L,秋期:18mg/L,冬期:25mg/Lまで処理できた。SSについても夏期:10mg/L,秋期:15mg/L,冬期:32mg/Lと良好な処理水質が得られた。全リンは,PACを添加することで,1mgP/L以下まで除去できた。300日間を超える長期運転で,1回のみの汚泥引き抜きで高い処理性能を維持できた。 (2)UASB保持汚泥のメタン生成活性(MPA)と硫酸塩還元活性(SRA)を,試験温度35℃と10℃で評価した。その結果,試験温度35℃では,両基質においてMPAがSRAを上回った。試験温度10℃では,酢酸基質でMPAとSRAが同レベルとなった。水素基質ではMPAがゼロとなったが,SRAは0.008gCOD/gVSS/dayとなった。処理温度が低下したUASBでは,水素消費者としてメタン菌の代替を硫酸塩還元菌が担い,グラニュール構成に必要なメタン生成菌が保持されていると考えられる。 (3)Real-time PCR法を用いたapsA遺伝子の定量系を構築することができた。この定量結果より,UASB内にはDesulfobulbaceae,Desulfovibrionalesに属する硫酸還元菌が一年を通して優占して存在していることが判明した。また,APSC-1に属する細菌もこれらの硫酸還元菌と同程度の存在率で,一年を通して定常的に存在していることも判明した。 (4)UASB内のapsA遺伝子数は,Desulfobulbaceae, Desulfovibrionalesに属する硫酸還元菌とThiobacillus属のもの,Syntrophobacter属とAPSC-1由来のものが同様の季節変動を示した。
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