研究概要 |
壁板を格子に分割し、各格子点に小さな穴を開け、アラミド繊維ストランド束を縫付けていくことにより、定着を確保したバンドを形成してひび割れの開口を拘束する補強方法を提案し、模型試験体の製作を兼ねて施工性の検討を行った。壁板周辺で繊維束を定着しなければならないが、繊維束を重ね合わせて継手を設けるよりも、柱のせん断補強を兼ねてフープ方向に巻きつけるのが有効であった. 先ず、5体の模型実験を行い、既存RC耐震壁の耐震補強および地震被害を受けたRC耐震壁の補修・補強の両方に効果があり、せん断耐力および変形能力が向上することを確かめた。地震被害を受けたRC耐震壁では、剛性も回復することがわかった. 次に、補強繊維量による補強効果を定量的に把握するために、補強量をパラメータとした4体の模型実験を行い、実験の範囲内で、せん断耐力および変形限界が補強量に比例して増加することを確かめた。壁板に取り付けた補強繊維束のひずみを測定し、せん断力伝達機構を表現できるマクロモデルを仮定して、補強効果が得られるメカニズムを考察した結果、圧縮応力を受ける壁板コンクリートの拘束効果が大きいことが判明した。 鉄筋コンクリート造耐震壁あるいはインフィルブロック壁の補強に適用し易いように、次のフェーズの準備として、CFシートを元材料とする新しい改良型CFアンカーを試作し、基本性能を明らかにする要素実験を実施した。CFシートから製作することによって施工性が大きく改善され,接着面積を容易に確保でき大きな耐力を得ることが可能であることがわかったが、樹脂の含浸状態が耐力に大きく影響することから、安定した耐力を得られる仕様に改善していくことが今後の課題である。
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