既存杭基礎を耐震補強することは、施工困難でありコストもかかる。そのため、杭基礎の耐震補強法は確立していない。そこで、本研究は、基礎部周辺地盤を最適に改良することで基礎部に加わる土圧を制御し、杭頭せん断力を軽減して、総合的に既存杭基礎の耐震補強を行う手法を開発することを目的としている。平成16年度は、乾燥砂で杭-基礎部-上部構造物系の振動実験を行い、基礎根入れ部に加わる土圧、側面摩擦力の基礎的検討を行った。得られた知見を以下に示す。 (1)上部構造物慣性力と土圧合力の位相の関係を検討した。その結果、構造物慣性力と土圧合力が逆位相になると、杭応力が顕著に減少することが分った。また、構造物固有周期および地盤卓越周期、地盤変位および基礎部変位を考慮することで、提案手法で上部構造物慣性力と土圧合力の位相を概ね推定できることを示した。 (2)従来、計測が困難であった基礎部に加わる地震時側面摩擦力の評価法を提案し、遠心載荷実験で、その妥当性を検証した。その結果、提案手法で側面摩擦力を評価できることを示した。 (3)同じ相対変位でも上部構造物の固有周期によって、地震時土圧が大きく異なることが分った。その要囲を検討したところ、短周期質点モデルでは、土圧合力と地盤加速度が同位相となるのに対し、長周期質点モデルでは、土圧合力と地盤慣性力が逆位相となった。地盤加速度の位相を考慮して、物部・岡部の理論で地震時土圧を算定したところ、実測値とほぼ一致した。地震時土圧を算定する際、地盤と基礎の相対変位のみならず、地盤加速度の位相まで考慮する必要のあることが分った。
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