研究概要 |
本研究は,災害統計及び災害に間接的に影響している要因を調査,分析することで,災害リスクの程度を定量的に評価することを目的としている.本年度は,以下の項目について資料収集・整理,分析を行った. 1)データベース作成 労働災害統計及び背景的要因となっている建築統計,気象統計をデータベース化し,特に「起因物」,「災害型」について,建設業全体,建築工事,土木工事,設備工事別の傾向を分析した. 2)標準化工期を用いた災害の分析 1)の建築統計から,木造,鉄骨造,鉄筋コンクリート造,鉄骨鉄筋コンクリート造の構造別に最も工事量の多い建築物の仕様および規模からモデル建築物を設定し,標準工程を定めた.この標準工程をもとに,1981年から2002年までの3年ごとの死傷災害発生数から,工期を100(%)とした工程中の時系列の災害発生率を算定し,構造別の発生傾向について分析した.結果,木造工事が他の工事に比べて突出してリスクが高いこと,構造別にリスクの高い時期が施工内容に応じて異なること,この手法を用いることで長期的な災害の推移を詳細に分析することが可能であることなどを示した. 3)海外の教育システムの照査 英国,米国,オーストラリア,マレーシア,インドネシアの大学の建設系学部,学科課程における,「コンストラクションマネジメント」,「リスクマネジメント」,「労働安全衛生マネジメント」に関連する教育の実施状況について調査した.これらの科目が我が国で実施されている例は希であるが,英国,米国,オーストラリアにおいては,無作為に調査した25校中の過半数で,マレーシア,インドネシアにおいても3分の1以上で,これらの科目が正規科目として採用されており,特に「安全衛生マネジメント」に関連する科目では,即戦力技術者養成を目的とした教育が実施されているなど,我が国よりも実務教育が充実していることが明らかとなった.
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