研究概要 |
多層骨組の柱材は,常時荷重による応力に加えて,地震時に二方向の水平力と変動軸力を受ける.本研究は,このような多軸応力状態におけるH形断面鋼柱の不安定挙動を明らかにすることを目的とする.H形断面柱は,強軸曲げを受ける場合と弱軸曲げを受ける場合で異なった不安定挙動を示す.通常,強軸曲げを受ける場合は曲げ捩れ座屈によって不安定となり,弱軸曲げを受ける場合は局部座屈またはP-Δ効果によって不安定になる.多軸応力下での挙動に関する実験を行う場合,種々の載荷方法が考えられるが,二軸曲げは水平力により作用させる方法とする.断面の主軸からある角度をもった方向に水平変位を与える載荷とし,角度を変えることにより水平載荷方向と材の不安定挙動の関係を明らかにする. 本年度は基本となる一定軸力下での水平方向載荷実験を行った.断面形状が1種類,軸力比が0.3の1種類とした.実験変数は,細長比(材長750,1100mm),水平載荷方向(0,30,60,90度),載荷パターン(単調,繰返し)で,計16体の試験体について実験を行った.試験体は溶接組み立てH形断面材とし,軸力載荷は荷重制御,水平載荷は変位制御とした.柱二軸曲げ実験の他に,柱の局部座屈耐力や弾塑性挙動を調べる圧縮実験および素材試験を行った.実験結果を整理し,崩壊モードとエネルギー吸収能力について実験に基づき考察した. その結果,強軸曲げ(0度)以外の試験体は,最終的に弱軸曲げ(90度)の方向へ近づくように捩れて崩壊する.載荷角度,載荷パターンにより崩壊に至るまでの挙動は大きく異なる.単調載荷では強軸曲げのエネルギー吸収能力が最も大きく,弱軸曲げに近づくにつれてエネルギー吸収能力が小さくなる等の知見を得た.
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