平成18年度は実大土塀を築造して材齢3ヶ月間の暴露試験を実施した。また、平成17年度の研究により本研究で用いた現代の材料(高炉セメント、セルロースなど)によって築造された土塀は従来から用いられてきた日本古来の材料(生石灰、にがり、わらなど)で用いられた土塀より強度・耐久性とも優れていることを実証したが、本年度は長期材齢においても同様な結果が得られるかを実証した。配合条件としては、従来の土塀では生石灰を80kg/m3、にがりを容積比として1%、わら(繊維長5〜15mm)を容積比として1%とした。一方、本研究で対象とする土塀は、高炉セメントB種が80kg/m3、メチルセルロースが容積比として1%、ビニロン繊維(繊維長15mm)が容積比として1%とした。試料土は千葉県より採取した砂質土の現場発生土である。実験条件としては従来及び本研究の土塀とも、それぞれ仕上げを施したものとそうでないもの及び屋根を設けたもの(仕上げせず)の3種類とした。また、一軸圧縮供試体を作製して3ヶ月間の強度を測定するとともに試験前に複数回吸水試験を行って強度の測定を行った。 3ヶ月の暴露試験の結果、本研究の方法で築造した土塀は劣化がほとんど見られなかったのに対し、従来の土塀には激しい劣化が認められた。ただし、本研究で対象とした土塀の方には、より多くの苔が付着していた。仕上げや屋根を設けた試験体にはほとんど苔の付着はなかった。特に、屋根は苔の発生を抑制する効果が大きいことが判明した。長期材齢と強度との関係については、4週以後強度はほぼ一定になることがわかった。また、吸水と乾燥を繰り返し与えた後に強度試験を行った結果によると、従来の配合では土塀の一部が水に溶解したのに対し、本研究による土塀ではほとんど水に溶解することはなかった。
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