本研究は、地盤改良工法に基づく版築技術を用いて、土塀として適切な土の物理的性質、セメントの種類、セメントの添加量、混和剤及び繊維材の種類とその配合量を明らかにすることを目的として行われたものである。版築技術とは土を締固める技術である。まず、強度と耐久性の両面について版築に適している土を一軸圧縮試験及び暴露試験から調べた結果、これらの土は共通して粘土含有量が30%程度、最適含水比が10%〜30%で湿潤密度が1.8g/cm^3以上の値を示すことがわかった。また、固化材として高炉セメントを用いると、古代から用いられてきた生石灰や消石灰に比較して3倍の強度を有することがわかった。さらに、固化材の添加量は80kg/m^3〜100kg/m^3が風化や施工性の面から適切であることを明らかにした。混和材に関しては、古代から用いられてきたにがりと現在高流動コンクリートに用いられているメチルセルロースをそれぞれ1%混入した供試体を作製し、その効果を一軸圧縮試験、体積収縮率試験及び水密性試験の3つの実験より検討した。その結果、いずれもメチルセルロースは、にがりを用いた試験体より優れた性能を示すことがわかった。繊維材に関しては、古代から用いられてきたわらと現在コンクリートの靭性の確保を目的として用いられているビニロン繊維を混入した試験体(土の体積に対して1%添加)に対して12ヶ月の暴露試験を行った結果、わらの試験体は表面に風化が見られたのに対し、ビニロン繊維の試験体にはほとんど風化は認められなかった。以上のように、古代から用いられてきた材料を現在のコンクリート工学の分野での新材料に置き換えると、きわめて耐久的に優れた土塀が再現できることを明らかにした。
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