研究概要 |
1.既存そで壁付柱に対する、ポリマーセメントモルタル(PCM)を用いた耐震補強工法のせん断補強効果を明らかにするために,そで壁付柱部材の静的耐震実験を行った。 2.試験体の大きさは、実大の約1/2〜1/3程度であり、既存部のそで壁付柱は,柱にそで壁が両側に接合しており,そのそで壁は偏心している形状である。試験体の寸法は,柱断面を300×300mm,試験区間900mm,そで壁長さを600mm,そで壁厚さを60mmとしている。 補強は,上記の既存部そで壁付柱に補強鉄筋を設置(配筋)し,PCMを用いて塗り付けていく。既存部とPCM補強部の間の応力は,PCMの接着力のみで伝達するものである。 変動要因は,以下を明らかにするために2項目とし,合計6体の試験体を計画した。 (1)補強部位による補強効果の違い:壁部分のみの補強,柱部分のみの補強および双方を補強した場合の3水準 (2)せん断補強筋量:柱せん断補強筋比および壁補強筋比を変動させそれぞれ3水準設定した。 加力は反曲点が部材中央に存在するように,建研式加力で正負交番繰返し載荷を行った。 3.実験結果より以下の知見を得た 1)PCMを用いることで,補強部は,既存部と接着によって一体化し,せん断補強効果が十分に得られる。 2)その補強効果は,そで壁部のみの補強では強度の向上が,柱部のみの補強では独立柱としての靭性の向上が得られ,補強方法を選択する事で破壊モード・耐力をコントロールできる。 3)せん断補強筋量の増加と共にせん断耐力が増加し,せん断補強効果が上昇する。
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