研究概要 |
本研究では,既存RC造そで壁付柱に対してポリマーセメントモルタル(PCM)を用いた新たな耐震補強工法を確立することを目的としている。本工法は,今まで2次部材として耐力評価されていないそで壁等の部位にPCMを用いて鉄筋を塗りつけて補強することで構造性能をコントロールしようとするものである。 平成16年度は,耐震補強工法のせん断補強効果を明らかにするために,そで壁つき柱部材の耐震実験を行い,以下の知見を得た。 1)PCMを用いることで,補強部と既存部は接着によって一体化し,せん断補強効果が十分に得られる。 2)その補強効果は,そで壁部のみの補強では強度の向上が,柱部のみの補強では独立柱としての靭性の向上が得られ,補強方法を選択する事で破壊モード・耐力をコントロールできる。 3)せん断補強筋量の増加と共にせん断耐力が増加し,せん断補強効果が向上する。 平成17年度は,上記の補強効果の評価と設計法の確立に必要な基礎データの取得を行い,補強工法のせん断抵抗機構について検討を行った。基礎データについては,以下の知見を得た。 1)PCM材料を構造材料として用いるため,材料試験のデータを蓄積し,基礎的な特性を明確化した。 2)既存部と補強部の接着特性を評価するため,コンクリート表面に塗りつけたPCM材料の建研式接着力試験を行った。試験結果は,すべてコンクリートとの界面・表層で破断し,1.5N/mm^2前後の高い引張強度を有することを示した。 そして,以上を受けた検討より,補強工法のせん断抵抗機構は,(1)補強したせん断補強筋の引張抵抗(トラス的な挙動)によって,せん断補強効果が得られる(2)PCM材料も既存部と一体化して圧縮抵抗に寄与している,ことを示した。 これらの成果により,本研究で提案する耐震補強工法は,そで壁を耐震的に取り入れて,様々な要求性能に対応した工法として実現可能であることを示した。
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