研究概要 |
(1)GIS(地理情報システム)を用いて,造成前と造成後の縮尺1/2,500の地形図から標高の差を求め,切土・盛土を判別する手法を示した。2001年芸予地震による家屋の瓦屋根被害は盛土部と,層厚+5mから-5mの間の切土・盛土境界部に多く発生し,切土部においては瓦屋根被害の発生が見られない傾向があること,また推定した切土,盛土またはその境界部の層厚に対して卓越振動数に明確な差があることを確認した。切土・盛土の層厚が地盤の卓越振動数に関わり,地盤の卓越振動数の違いが家屋の瓦屋根被害に大きく影響を与えた可能性は高い。 (2)広島市および廿日市市の丘陵造成地12団地の切盛図を造成前後の1/25,000の地形図を基に作成し,芸予地震で木造被害の判明している地点と切盛りとの関係を検討した。被害は盛土に多く生じる傾向があるが,切土にも40%程度生じている。造成地の常時微動測定を行い,卓越周期,平均振幅,振動の方向性について被害との関連を調べたところ,卓越周期は3〜4Hz,盛土部では平均変位が盛土厚に従い大きくなる場合に被害が生じる傾向があり,被害の65%の地点では地形や盛土構造による振動の方向性がみられる。また実験により瓦屋根の耐震性については,棟部で水平2500cm/s^2以上の加速度に達すると破壊が生ずることが分かった。 (3)全広島県下における宅地造成地の情報を1/25,000の地形図レベルで収集し,旧地形図との比較により合計118枚の切盛り区分情報を抽出した。これらは,全て「切土地」,「埋土地」,さらには沿岸部の「埋立て地」毎に区別してポリゴン化しており,GIS標準のShapeファイルとしてデータベースが完了した。従って,全広島県下における造成地の分布ならびに切盛り区分の概況を簡便に知ることができ,各宅地造成地の周辺の現地形情報との関係から地震や豪雨時の地盤変状の可能性や,地盤変状が生じた時の影響の範囲等を概略評価できる。
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