研究概要 |
平成16年度は本研究課題の第1年度として、以下のような知見を得ることができた。 1 五重塔5分の1模型の組立と常時微動測定 振動実験の試験体は法隆寺五重塔に代表される飛鳥様式を仕様として、宮大工により実物同様に精巧に製作された5分の1模型である。総高6.6m、塔身のみで4.7m、初層から四層は方三間、五層のみ方二間である。試験体組立(防災科学技術研究所振動台実験場)時に計測した重量は木部のみで1,031kgf、これに相輪と屋根(積載)荷重を加えると2,055kgfとなる。基礎的な振動特性を把握するため、振動実験の前に常時微動測定・人力加振実験を行った。得られた自由振動波形からフーリエ解析を行い、伝達関数を求めたところ、1次固有振動数2.73Hz、2次3.22Hzとなった。 2 振動解析モデルの検討 五重塔の各層の剪断剛性を推定するため、五重塔全体を各層の質点と剪断ばねからなる5質点系にモデル化した。各層の質点の質量は積算によって求めた値を用い、測定結果に近似する固有振動数と振動モードが得られるような各層の剪断剛性を試行錯誤的に当てはめることにより求めた。本年度は最勝院五重塔について5質点系の振動解析モデルにより、振動モード及び測定値と計算値との比較を行った。最勝院五重塔(1次・測定値0.83Hz,計算値0.83Hz/2次・測定値2.00Hz,計算値2.06Hz)。また、既存のデータである法隆寺五重塔(0.90Hz,0.90Hz/2.50Hz,2.40Hz)、日光東照宮五重塔(0.78Hz,0.78Hz/2.54Hz,1.88Hz)、永明院五重塔(1.89Hz,1.87Hz/5.57Hz,4.43Hz)との比較も行った。この結果、1次、2次の振動モード及び固有振動数では測定値と計算値とは比較的良く一致することがわかった。
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