本研究は、夏季から秋季にかけての住宅における熱的快適性と省エネルギーをいかに両立させるべきか、冷房使用と自然通風利用の相補性に着目して考察した。エネルギー消費量推定のためには、冷房使用だけでなく、通風利用の実態についても冷房使用との関係において明らかにする必要がある。また、夏季から秋季にかけての快適な室内温熱環境の実現のためには、通風利用も考慮に入れる必要がある。住宅は、オフィスなどの管理式空調よりも温熱環境を細かく調節している場合が多く、住宅の冷房使用と窓開閉の実態を明らかにすれば、冷房と自然通風の最適な併用による温熱環境調節の実現に寄与できると思われる。 同一住棟における同一平面の10戸の集合住宅における室内温熱環境、冷房使用、窓開閉について盛夏期から暖房開始期まで20秒間隔で詳細に実測した。これに基づいて、居住者在宅時について、以下を明らかにした。1)冷房使用率と窓開放率はそのときの外気温の関数としてモデル化が可能である、2)窓開放による温熱環境調節の上限は外気温31℃であり、31℃をこえると調節行動の特性が変化する、3)外気温22-23℃で冷房使用率が急増する、4)中間期における外気温と窓開放率の関係は、ヨーロッパのデータと類似性が認められた、5)外気温が室温より3-5K低いとき窓開放行為が最も盛んである、6)時間帯より温熱環境が温熱環境調節行為に影響する。 また、290戸の就航住宅居住者に冷房使用と窓開放に関するアンケート調査をおこない、以下を明らかにした。7)開放の理由として、開放低頻度グループは、「におい」「ベランダに出る」が強く、高頻度グループは「外気との接触」「室内の居心地の向上」が強い、10)閉めておく理由として、開放高頻度グループは低頻度グループよりも「雨」が強い。11)閉める理由として、開放低頻度グループは高頻度グループより室内外の「騒音」が強い。
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