研究概要 |
本研究は都市キャノピー層の影響要因を系統的に調整できる温度成層風洞を用いて,大気安定度と熱的乱流特性の関係、および都市キャノピー層の対流熱伝達率の算出を目的として研究を実施し、次の知見を得た。 1.都市のヒートアイランドを模擬した不安定流れ場の乱流性状に関する検討 温度変動と風速変動の相関を調べるため,冷線温度計と熱線風速計を用いて、温度、主流方向風速および鉛直方向風速の三成分を同時に収録した。都市を模擬した粗度配列の場合,X方向,Z方向の乱れの強さは、バルクリチャードソン数の絶対値に比例する傾向が得られた。水平方向の運動量フラックスはバルクリチャードソン数に関わらずほぼ同様の傾向を示した。鉛直方向の熱フラックスはバルクリチャードソン数に関わらず温度境界層高さの1/5から1/4付近で極大を持つ傾向を示した。 2.二次元建物後流近傍の熱的乱流性状に関する検討 建物を模擬した2次元フェンスを設置し、不安定流れ場におけるフェンス後流の熱的乱流性状を測定した。フェンスが無い場合に比べて、フェンスの背後で温度の上昇が見られた。鉛直方向の熱フラックスはフェンス高さで負の値となり、高さの増加とともに値が増加する傾向が見られた。 3.大気安定度を考慮した都市キャノピー層の対流熱伝達率に関する実験式の算出 バルクリチャードソン数を0から-0.26まで変化させて、上空風速を関数とする対流熱伝達率の実験式を非線形回帰分析で算出した。風速が一定でバルクリチヤードソン数の不安定度が大きくなると対流熱伝達率は増加した。また、バルクリチャードソン数が一定で風速が大きくなると、同様に対流熱伝達率は増加した。今回は、実験ケースが少ない状態で回帰分析を行ったので、既往のルイス式との定量的な比較はこれからの課題である。
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