研究課題
今年度は、昨年度に得られた、実空間実験での結果に基づき、注意の偏りを誘発する環境要因を設定し、それを系統的に変化させた空間をCGで作成した。これを、大型の没入型スクリーンと足踏み連動型の移動インターフェースを組み合わせたシミュレーションシステムにより提示し、被験者を用いて、実空間実験と同じ評定装置により「圧迫感」の評定を行った。被験者の帽子に取り付けた3Dモーションセンサにより回頭行動を記録した。このシミュレーション空間を構築した建物、地形等のCGデータを用いて、環境視情報の計測プログラムにより、経路に沿った視環境変量のプロフィールを作成し、回頭行動の計測結果から注意の偏りを定量化した上で、圧迫感および視環境変量との関係の分析を以下のように行なった。・視環境変量と注意の偏りとの関数関係を求め、環境視情報に起因する注意の偏りを推定。・全方向からの視環境変量から圧迫感を予測する従来の式と比べ、注意の偏りを変数として加えた場合に予測精度がどの程度向上するのかを検討。これらの結果と、前年度までに得られた実験結果を総合して、注意を誘導する環境要因を視環境変量により定量的に捉え、それを含む「圧迫感」の予測式を求めた。その結果、従来から環境の視知覚を焦点視と環境視とに分けてとらえ、場所の雰囲気などの情緒的な反応は環境視に基づくと考え、その情報は周囲全方向から均等に受容されるとしてきたが、それを本研究の結果を踏まえて修正し、環境視情報によって視野の特定の領域に注意が偏ることによる選択的な情報取得を考慮した、新たな環境知覚モデルを提示した。
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1st International Symposium on Environment, Behaviour and Society (In printing)