伝統工芸産地は、経済不況下の中で産地全体の活力が低下しているが、伝統工芸を地域資源とした都市を再生するには、来街者との交流を促進することで地域文化やコミュニティなど地域としての総合力を高めていくまちづくりを進めていくことが重要である。そこで本研究は、全国の伝統工芸産地を対象として、伝統工芸の生産・流通システムとまちづくりの実態について、特に先進事例を分析することにより、今後の伝統工芸産地再生方策の知見を得ることを目的としている。その中で平成16年度は下記の研究を行った。 1.全国の伝統工芸産地のまちづくりの概要 全国の伝統工芸産地118産地(織物、陶磁器、漆器、木工品、和紙)の組合にアンケートを行い、産業振興施策とまちづくり施策の実態を調査した。 その結果、保護育成、研究開発、交流情報、販売促進、観光、居住などの多様な施策が展開されていることが明らかになった。また各種イベントや研修会・講習会、情報発信などが多く行われていることがわかった。 2.伝統工芸を地域資源としたまちづくり手法の事例調査研究 (1)伝統工芸産地における空き工場の活用に関する研究-愛知県常滑市における事例- 愛知県常滑市を研究対象とし、産業遺産である空き工場を活用している事業所・店舗に着目し、これらの事業所・店舗の展開プロセスや発生要因を分析することで、産業遺産活用の実態を明らかにした。その結果、職人は発表の場や客との交流を求めており、産業遺産を活用し安価に多目的に利用できる場を提供することが重要であることが明らかになった。
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