伝統工芸産地は、経済不況下の中で産地全体の活力が低下しているが、伝統工芸を地域資源とした都市を再生するには、来街者との交流を促進するなど地域文化やコミュニティの再生を行い地域としての総合力を高めていくまちづくりを進めていくことが重要である。そこで本研究は、全国の伝統工芸産地を対象として、伝統工芸の生産・流通システムとまちづくりの実態について、特に先進事例を分析することにより、今後の伝統工芸産地再生方策の知見を得ることを目的としている。 1.全国の伝統工芸産地の概要 全国の伝統工芸産地自治体にアンケートを行い概要を把握した。(1)事業所・従業員数・生産額ともに大半の産地が減少していること(2)販売体制は問屋制から直売制にシフトしていること(3)ものづくりだけでなく、まちづくりやくらしづくりなど多様な取組を行ない、産地としての総合力をつけようとしている実態が明らかになった。 2.地域振興の取組実態と芸術家の役割 上記の調査で、芸術家の役割について分析した結果、まちづくり・くらしづくりの取組においては芸術家は大きな役割を担っており、「芸術家の増加」、「地域の総合力を高め人材の底上げをする」「芸術家による多様な地域振興の取組」の3つが互いに共振するまちづくりが必要であることが明らかになった。 3.伝統工芸産地における空き工場の活用に関する研究-愛知県常滑市における事例- 愛知県常滑市を研究対象とし、産業遺産である空き工場を活用している事業所・店舗を調査した結果、職人は発表の場や客との交流を求めており、産業遺産を活用し安価に多目的に利用できる場を提供することが重要であることが明らかになった。
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