研究概要 |
共用のスペースを設けた高齢者向けの賃貸住宅について,全国の事業主体あるいは管理主体に対して建築内容,住宅・住棟平面,管理方法を訪ねる調査票を作成し,郵送により配布し,実態を把握する調査を行った。207の配票に対し112票を回収した(回収率54.1%)。 回収した調査データについて,住戸平面や住棟形式について類型化を行い,それらが形成される要因の動向を分析し,検討した。 その結果,住戸規模は,年々拡大傾向にあり,DK型からリビングを確保したLDK型へ変化しつつあるものの,一方でワンルームの小規模なものが供給され,二極化が見られること,住戸規模はLを確保すると40m^2前後になること,居室の配置には種々のパターンが見られるが,東日本では洋室を確保する傾向が強いのに対し,西日本では和室志向が強いことを明らかにした。 住棟計画では,3階から8階建てが占める比率が高く,各階には3戸から6戸を配置する事例が多かった。共用スペースを類型化すると,1階に1箇所だけ配置したものが7割以上を占めたが,各階に1箇所配置したものや,各階に複数箇所配置して高齢者相互の交流を促進することを意図したものまでが見られた。その後,共用スペースの類型化を行った。 以上の実態調査を踏まえ,共用スペースの拡充程度により高齢者相互の付き合いの程度に影響が見られるのか否かを明らかにするため,各共用スペースのタイプ別に,現地における観察調査を実施した。住戸外の屋内に配置された共用スペースを対象として分析すると,基本的には,団らん室・集会室などの共用スペースが占める割合・個数が高くなるほど,高齢者間の付き合いが高くなっている傾向が見られた。しかし,このような一般的な傾向から外れるものもあり,その要因は管理主体による積極的なデイサービスであることが把握された。
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