平成17年度に行った、全国の高齢者向け優良賃貸住宅の実態調査について、分析が残されていた項目について継続した分析・検討を行った。特に本年度は、共用空間に注目した分析を行った。まず、共用空間の確保と配置パターンによる類型化を行い、それらが形成された要因を、各住戸の規模、住戸の平面構成、住棟の各階を構成する住戸数、エレベーターの設置状況、併設施設、運営主体が実施するアクティビティ内容、立地する地域等の観点から分析した。その結果、住戸規模が小さい場合や各種のアクティビティを提供する場合には、共用空間を確保する比率も高くなる傾向が見られた。 次に、共用空間を確保する個数や設置タイプごとに典型事例を11箇所、全国から選定し、現地において、団らん・集会室等の主な共用空間と、廊下等立ち止まって交流できる共用空間の使用実態を観察してデータを取得した。平面図に置かれている家具、生活用具、展示物、装飾品等の実態を書き込み、写真を撮影した。これらを共用空間の類型別に検討した結果、各階等に複数設置しているタイプの方が、1階だけに設置しているタイプよりも、居住者相互の交流が多く発生している状況や、各住戸が生活内容を共用部分に表出する度合いが高いことが見られた。したがって、現在の高齢者向け優良賃貸住宅制度が共用空間を確保できるものになっていることは評価され、各戸から近い位置に共用空間を確保することが望ましいといえる。また、運営主体がアクティビティ等を積極的に行って居住者相互の交流を計っている事例においても、共用空間が使用される割合が高く、住戸からの表出も多いことが見られた。 以上の成果も含め、平成16年度から検討した内容・成果をまとめ、報告書を作成した。
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