わが国の集落では、集落内の物的・人的資源を活用した循環的な環境の形成・維持管理のシステムが有効に機能してきた。集落景観に代表されるその物的環境は、集落を取り巻く自然から得られる環境構成材料を集落のマンパワーが活用する循環型の環境維持システムが、歴史的に形成してきたものであるといえる。しかし、現在こうしたシステムは、高齢化・過疎化などの要因で、うまく機能しなくなり、環境の悪化につながっている。本研究は、集落景観を構成する要素のうち、民家等の建築物、石垣等の工作物の建設・維持と集落固有の循環型システムの関係を復元的に明らかにし、また、そのシステムの現在おかれている状況や修復可能な部分についてどのようなサポートを行うべきかを実践的に提案しようとするものである。 17年度は、徳島県東祖谷山村落合集落におけるケーススタディからなる。対象地区では、重要伝統的建造物群保存地区選定作業がすすんでおり、そのなかで茅場の復原や、伝統的民家の普請材料などの循環プロセスの再構築を検討した。作業内容は、伝統的環境維持システムの現況調査である。その結果、(1)集落の環境維持には「組」と呼ばれる互助組織が機能してきたこと、(2)それらが現在でも残っている機能(冠婚葬祭等)と、失われた機能(民家・石垣普請等)があること、(2)新しいシステムは、外部からのサポートを含めて両者を補完し合うような設計を行うべきであること、が明らかになった。
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