研究概要 |
本研究は既存公共建築物の長寿命化を図るとともに,公的集合住宅を中心とする地域住宅ストックの活用を視野に入れ,新規・既存の建築物について,柔軟な転用や複合化によって施設群を有効活用する地域公共施設ネットワークを構築する方法論の開拓を目指すものである.本年度の実績は次の通りである. まず,本研究の目標を達成するに相応しい対象地域として,住宅市街地を中心として高度経済成長期に建築ストックが蓄積された地域であり,かつ我が国の将来の市街地像を先取りしている東京都多摩市を選んだ.多摩市は我が国最大の計画開発住宅地である多摩ニュータウンを含んでいる. 続いて準備として,対象地域に存在する学校,庁舎などの市有の公共建築物について,建設年次,規模,構造,転用履歴,修繕・改装履歴などの項目を悉皆的に調査し,データベース化した.また,対象地域の国勢調査の人口データを町丁目等の単位でデータベース化し,それをもとに20年後までの将来人口予測を行った. これを受けて,特に市有の地域集会施設を対象とした分析を行った.まず,地域集会施設の整備の歴史的経緯を市の基本計画におけるコミュニティゾーンと対応付けつつ整理した.この結果から,コミュニティゾーンごとの地域集会施設の整備状況が大きく異なっていることが判明した.一方で,地域集会施設のなかでもコミュニティセンターに注目して,利用実態調査を行った.あわせて既往のアンケート調査からも利用実態に関するデータを抽出した.これらをもとにして,コミュニティセンターの貸室の将来需要の変動を予測したところ,ホールへの需要が施設容量を超過することが判明したので,既存の小中学校にホールを追加設置する場合の最適位置を算出した. さらに,ニュータウンのイメージを探るための基礎的研究として,多摩ニュータウンを舞台とした映画に現れたニュータウンらしい景観を定量的に分析した.
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